はじめに
電験三種に合格して、実務を行う上でどうしてもネックとなるのが保護継電器試験ではないだろうか?
高圧電気設備の維持管理では、月次点検、年次点検、緊急対応が業務の柱となる。資格を取ったからと言ってそう簡単に業務を行えるわけではなく、先輩格の人に付いて経験を積むのが電気主任技術者の仕事と言える。
筆者の場合は、ごみ処理場や浄水場などのプラント設備の維持管理が仕事だったので電気設備の点検は保安協会の点検に立ち会う事くらいしかさせてもらえなかった。(簡単に言えば仕事をみているだけだ。)

保護継電器試験実務講習に参加

数年の後、会社で何とか高圧電気設備の点検を行えないかという話になり、資格保有者が保護継電器試験の実務講習に行かせてもらえることになった。講習内容は、座学と実務で6時間30分で、費用は17,000円程。
この講習さえ受講すれば年次点検で行う保護継電器試験の実務が身に付けられると思ったのだが、そう簡単ではなかった。確かに内容はしっかりとしたものなのだが、結局のところ機械に触る時間が短く、納得するまで練習するというわけにはいかないのが現状だ。

どんな簡単な事でも経験しないと身に付かない
筆者はプラントで働く事が多かった、ごみ処理や粗大ごみ処理のいわゆる清掃工場とか、浄水場などだ。そういう現場で働いていて感じるのは、「どんな簡単な作業でも実際にやらないと身に付かない」という事だ。ましてや難しい作業や操作などは、何回も練習してやっと感覚がわかってくる。(一番身に付くのは失敗した時だ。)
誰もが失敗しないようにと行動するのだが、殆どの場合失敗を重ねて、やってはいけない事を経験して上達していくように思える。
話が逸れたが、保護継電器試験器という訳のわからない代物を、電気主任技術者は使えるようにならないと商売にならない。にも拘わらず、容易に触る事さえ許されないのだから理不尽な話だ。
もちろん保護継電器試験が使えなくても結果だけ評価すればいい立場の人は必要なのだが、やはりできた方が良いと誰もが考えるだろう。
保護継電器試験器というのは、100万円を超えるような代物で容易に買うわけにはいかない。そもそも保護継電器試験器を入手しても電流を流したり、電圧を加えるような設備で練習など不可能だ。
結局のところ、電気主任技術者は先輩に付きながら経験を積んでいくという師弟関係を踏まえた働き方になっていく。
シミュレーターという選択
実機もない師匠もいないとなれば、ノウハウは身に付けられないのだろうか?
ここからはプログラマーとしてのお話。
長年Excelのプログラマーとしてやってきた筆者としては、何とかシミュレーターを作れないものかと思い立ったのだが、そもそもExcelVBAはこの手のプログラムは想定されていない。
ところが、取り組んでみると他のプログラム言語よりも作りやすいことがわかった!
ExcelVBAの強みは何と言ってもインターフェイス部分が既にあることだ。
(まぁ本来の主役はインターフェイス部分なのだが、、、)
作ろうと思ったきっかけは、シェイプがVBAで動かせる事だ。また、それだけでなく、色を変化させたり、他のシェイプと差し替える事も可能。簡単なアニメーションができる事がわかった。
ボタンの形状や、トグルスイッチ、ランプをはじめ、メータ表示まで可能だ。実はこれをPythonで試してみたのだが、格段にExcelVBAの方が楽チンだった。
プログラムに興味のある方は以下のページを参照してください。
MTR Labo 完成
かくして出来上がったのが MTR Labo だ。MTRはマルチリレーテスターの略。Labo は工房という意味だ。
MTR Labo は、保護継電器試験の練習用に開発したので、シミュレーターとしての性能は厳密ではない。一番大切にしたのは、「操作を間違えると上手く動作しない」という点だ。
保護継電器試験器というのは多機能なので、スイッチが多く、電圧や電流の設定などが混乱しやすい。
もちろん慣れてしまえばどうという事はないのだが、まさにこの「操作に慣れる」ためのツールと言っていい。
冒頭で触れたとおり、講習や現場などで練習するよりも手軽で、何度でも操作を体験できる。もちろん実機操作に勝る経験は他にはないが、知識武装してから臨んだ方が習得が早いのは言うまでもないだろう。
新しい学習方法として手に取って頂ければ幸いです。
第2弾 SOG Labo 完成
こちらはPASの下に付いているSOGの試験を想定した練習機となる。MTR Labo は主に電気室で行う試験を想定しているが、SOG Labo はPAS下のSOGの試験を想定している。
SOGの試験では、配線方法も押さえておきたい知識だ。更に位相試験も追加されているので同じような機器を扱う場合には良い練習になると思う。
登録しなくても手順書が充実しているのでダウンロードしていただければ幸いです。





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